特集 産科医療事故を防ぐために
産科医療事故総論—産科学の立場から
堀口 文
1,2
1慶應義塾大学医学部産婦人科教室
2メルボルン大学医学部女性健康センター
pp.842-847
発行日 1994年11月25日
Published Date 1994/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901127
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はじめに
産科医療事故はあってはならないことだが,しかし現実には皆無というわけにはいかない。それは,分娩は母子のいずれにとっても危機であり,それが乗り越えられなければ母子は重大な障害に直面するからである。現在の産科技術は限りなく母子の安全を確保しており,その中での医療事故は極力避けなければならない。また万一事故が起きた場合でも,その事故が誰もが納得できるものでなければならないのである。
母も子も,人間はそれぞれが寿命を持ち,それがいつ終止符を打つかは誰にもわからない。しかし,予期せぬ事態を予想し,予防するのが医療の進歩である。そして,現在はほぼ安全に分娩を終了することができるようになったが,それだけに異常妊娠や合併症の早期発見,適切な治療や予防が望まれ,その不備による異常事態の発生は事故ととらえられる。また,うっかりミスや知識の不足などが事故につながることもあるが,これは医療側の問題で,われわれがこれをどうやって防ぐかについては,日頃から考えておかなければならないことである。
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