特集 妊娠中毒症—最近の考え方
妊娠中毒症はなぜ起こるか
橋本 平嗣
1
,
一條 元彦
1
1奈良県立医科大学産婦人科学教室
pp.483-488
発行日 1990年6月25日
Published Date 1990/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900111
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はじめに
産科学は,母体が健全な子供を安全に出産するための学問であり,その中で現在残されている最大の課題のひとつが高血圧,浮腫,蛋白尿を症状とする妊娠中毒症であることに疑いはない。この3症状の中でも高血圧は最も重要な位置付けをされ,妊娠中毒症の概念が次第にpregnancy induced hypertention(PIH)に変わりつつあるとも言える。妊娠中毒症の病因論については種々の学説が提唱されており,未だ学説の疾患の域を脱し得ないのが現状である。そのような中で細小動脈の攣縮,微小血栓形成,水バランスの異常などは特に重要視されており,それにまつわる因子としてレニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系,プロスタグランディン系,凝固線溶系をはじめとする種々の生態系の異常が解明されつつある。
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