特集 公衆衛生とエイズ
エイズ相談—エイズ・ノイローゼ
熊倉 徹雄
1
Tetsuo KUMAKURA
1
1都立墨東病院・神経科
pp.673-676
発行日 1988年10月15日
Published Date 1988/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207789
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■はじめに
1981年,アメリカでの世界初のエイズ患者報告以降,エイズ患者は急速に世界に蔓延し,エイズに対する不安や恐怖に人々の心は恐れ,おののくようになった.幸い,わが国ではエイズ患者は少なく,エイズは外国人や同性愛者にのみ感染するもので,エイズ騒動は「対岸の火事」とみなされてきた.しかし,1987年1月の「初の日本女性エイズ患者死亡」の報道を契機に,わが国は一挙にエイズ・パニックに陥った.異性間性交,つまり通常のセックスで感染した風俗産業の女性エイズ患者発生のニュースにより,我々は「対岸の火事」の火の粉を我が身に浴びることになったのである.
厚生省など関係諸機関は直ちにエイズ蔓延防止緊急体制をしき,東京都においても,急遽,エイズ相談窓口の開設,電話相談,抗体検査などを都立病院や保健所において取り組んだ.墨東病院でも1月22日からHIV抗体検査を実施したが,幸いにして抗体陽性者はいなかった.しかし,抗体陰性であるにもかかわらず,エイズに感染していると思い込み,深刻に悩む人が多いのが特徴的であった.そこで,感染症科のみで発足したエイズ相談業務に精神科医師も加わり,エイズ相談チーム(班長:今川八束感染症科部長)を結成し,これらの「エイズ・ノイローゼ」の人たちのカウンセリングや薬物療法を試みるようにした.
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