特集 エイズ,ATL,STD
母児垂直感染からみたSTD
松田 静治
1
1江東病院産婦人科
pp.540-544
発行日 1988年7月25日
Published Date 1988/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207416
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STDと垂直感染
近年わが国でも,性行動の多様化にともない従来の性病に加えて,性行為をめぐる諸疾患が増加してきた。かかる性交ないし類似の性行為により感染する疾患をsexually transmitted diseases(STD,性行為感染症)と呼ぶようになったのは,ここ10数年ほど前からである。STDのなかでは新しい疾患としてクラミジア,ヘルペス,パピローマウイルスなどが注目され,いずれも診断技術の進歩により実態が明らかになりつつある。STDの病因微生物は細菌,ウイルスから寄生虫にまで及んでいる。
妊娠中の性器の感染症は,しばしば出生時の胎児の感染源となる。STDももちろん垂直感染つまり産道感染の原因となる(表1)。たとえば産道に存在している淋菌が児に感染して新生児膿漏眼を,Chlamydia trachomatis(クラミジア・トラコマチス)が感染して新生児の肺炎や結膜炎を,真菌が感染して鵞口瘡を発症する。また子宮頸管や外陰に感染している単純ヘルペスウイルスが新生児に感染すると,新生児全身性ヘルペスを発症する。この疾患は予後が非常に悪く,その50〜80%が死の転帰をとる。したがって,分娩時に性器ヘルペスを合併している時は,経腟分娩をさけて帝切によって分娩させる方がよいといわれる。
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