助産婦事典
B型肝炎ウイルスの母児感染
川名 尚
1
1東大医学部産婦人科学教室
pp.502-504
発行日 1977年8月25日
Published Date 1977/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205250
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B型肝炎ウイルスについて
ウイルスによって肝炎が発症することは,かなり前から知られていた。潜伏期や感染様式によって,伝染性肝炎と血清肝炎(または,前者をA型肝炎,後者をB型肝炎)とに分けられていたことは,ご承知のごとくである。肝炎は日常的な疾患であるが,その病原体であるウイルスについては,精力的な研究にも拘わらず判らなかったが,免疫学者Blumbergがゲル内沈降反応によって発見した1本の沈降線がきっかけとなって,一気に道が開けたのであった。この業績によって彼は昨年ノーベル賞を受賞したのである。即ち彼は,頻回輸血を受けた患者の血清とオーストラリア原住民の血清を,最も簡単な免疫反応系の1つであるゲル内沈降反応で反応させたところ,1本の沈降線を得たのである。オーストラリア原住民の血清中に発見した抗原なので,この抗原をオーストラリア抗原と名付けていた。
ところで,発見されて間もなく,この抗原が肝疾患患者に高頻度に見つかること,特に,血清肝炎患者に検出されることから,臨床的にも注目を浴びるようになった。この点について,血清肝炎との関連を発見した1人で,当時,東大病院輸血部に居られた大河内一雄博士の名前は忘れてはなるまい。
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