連載 話の聴ける助産婦になるために・1【新連載】
カウンセリングによる心の理解
技術の根底にあるもの
大須賀 克己
1
1日本グロースセンターカウンセリング研究所
pp.319-322
発行日 1988年4月25日
Published Date 1988/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207361
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子供の世界
おそらく大部分の人々が,この地上に生まれて初めて人間として接触する相手は,助産婦である皆様であると思います。その瞬間は小さな生命であるとはいえ,その子のこれからの人生にとって,決定的に重要な一瞬です。大人から見れば,まだ意識も知的にも十分に発達していない新生児ですが,無意識のうちに子供の感覚は,敏感に活動しています。心理学的観点から見ても,生まれて間もない子供はそれなりに,生まれた社会を感じとろうとしているのです。
エリクソンというアメリカの心理学者は,人間に対する暖かさや冷たさを学ぶ時期は,生後1年間ぐらいであるといっています。生まれたぽかりの子供の体の中で,どのような感覚的変化が生じているのか,それほど明確にはわからないにしても,少なくとも新しい生命体は実に柔らかく,自分自身が発展しやすいように形成されています。ですから,強い外圧があるとたやすく傷つけられてしまいますし,逆に周りの環境が自分に快ければ,それに応じて自己を変えて自然界に適応するように働いています。
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