私と読書
「育児不安をこえる子育ての輪」を読んで
山根 小百合
1
1賛育会病院助産婦学校
pp.1074-1075
発行日 1987年12月25日
Published Date 1987/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207285
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助産婦による保健指導に多くの示唆
われわれ助産婦は,日常業務のなかで,妊婦褥婦を対象にさまざまな保健指導を行なっている。そのなかでも,育児指導の占める割合は非常に大きい。妊娠中は,保健所や病医院の母親学級や両親学級において,分娩後は,種々の機会を利用して行なわれる集団指導や個人指導の場で,新生児の生理に関すること,母乳のこと,沐浴の仕方などなど,微に入り細に入り指導している。核家族化が進行し,しかも少産時代ということで,育児経験の乏しい母親が圧倒的に多くなっているだけに,助産婦としても,できるだけ詳しく教えておかねば,と思うのかもしれない。
逆に言えば,それだけ助産婦の指導内容が母親の育児方法や育児態度に大きな影響を与えかねないということである。母子を取り巻く今日の時代状況のなかでは,助産婦の何気ない一言が母親の育児に影響し,時には育児不安の原因にもなり得るのである。本書は,その意味で,助産婦に厳しい内容をもっているかもしれない。しかし,それだからこそ,著者の指摘に謙虚に耳を傾けなければならない,と私は思う。
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