私と読書
歴史の源流から育児の本質をさぐる—「子育ての心」を読んで
宮中 文子
1
1京都府立医科大学病院産科
pp.868-869
発行日 1979年12月25日
Published Date 1979/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205650
- 有料閲覧
- 文献概要
育児の原点を見なおし,育児のあり方はどうあるべきかを示したこの本は,"いま育児にとって大切なもの"と副題がついている。現在子育てに関係ある人もない人も読みたい本である。1979年の国際児童年に発行されたのもタイムリーである。全230頁だから読み始めると数時間で読める。忙しい人なら読みたい項から読み進める。
勤務から解放されても,10か月の娘とまさに悪戦苦闘子育ての最中の私では,読書は中断されることが多い。けれど,この本は幸い娘が眠っている間に一気に読みきってしまった。それというのも,いま求めている答がこの中にあるのではないかと思い,自分の育児方針を確かめたい気持で読んだからだ。読み終えて,母の温もりを想いおこすような本であった。といっても著者は女性ではなく,『日本産育習俗資料集成』の編者としてよく知られている小児科医の沢田啓司氏である。小児科学の最先端の知識を学んでこられた著者が,なぜお産や育児の歴史を渉猟するようになったのかは,一読者として興味をそそられるところである。その経緯が『はじめに』の部分で詳しく述べられているが,ちょうど著者の基本的な考え方を知る上でも,良い手がかりになると思われるので,抜粋して紹介してみよう。
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.