特集 奇形・障害児を出産した母と児への看護・Ⅰ
ダウン症児を出産した母親への看護で学んだこと
郷原 弘美
1
1東京厚生年金病院
pp.934-939
発行日 1987年11月25日
Published Date 1987/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207257
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はじめに
私は助産婦として5年間働いてきて,多くの分娩に立ち会って来た。ほとんどの場合,児は問題なく誕生してくるが,やはり年間数例は外表奇形や代謝異常,染色体異常といった障害をもつ事例の看護を経験する。児の出生直後ほとんどの母親が最初に尋ねることは「五体満足ですか」という言葉である。明らかな外表奇形が無い場合は「だいじょうぶですよ」と自然に答えられるが,奇形があった場合はどうしても,「どうしよう」と思い,返事もあいまいになりがちである。このあいまいな返事に,母親も不安を感じるのであろう。さらに質問をする人と黙ってしまう人がいる。また,出生直後は何も問題が無いように見えても,改めて診察をすると,奇形や障害がみつかる例も少なくない。こういう例においても「だいじょうぶですよ」と言ってしまったことに対しての後悔もあるし,また問題ないと思って安心している母親が,児に何らかの奇形や障害があると知った時の心理を思うと,その後の自分はどうかかわっていけばよいかと悩んでしまう。
お産をする母親は,誰もが正常な子供の出産を望み,母親だけでなく,家族も心配や期待をしながらわが子の誕生を待ち望んでいる。
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