Medical Scope
ビタミンK欠乏性頭蓋内出血
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.547
発行日 1987年6月25日
Published Date 1987/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207168
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母乳栄養の新生児や乳児は突然頭蓋内出血をおこして死亡したり後遺症を残したりすることがありますが,今月は,このビタミンK欠乏性頭蓋内出血についてお話ししましょう。非常に大きな医学的テーマで,わが国でも昭和55年から厚生省に全国調査研究班が作られ,今日まで調査が続けられています。先日,この調査班の主要メンバーのお1人で,周産期の出血性疾患や止血機構などの研究で知られる北海道大学の鈴木重統教授のお話をうかがう機会に恵まれましたので,そのなかの大切なポイントを皆さんにお知らせしようというわけです。
この疾患は乳児性ビタミンK欠乏性出血といわれるように,出生後一時的にビタミンKが欠乏するために,ビタミンKに依存している血液凝固因子が不足して出血傾向が出現し,頭蓋内出血(多くは硬膜下出血)がおこるもので,母乳栄養児に多いとされています。この疾患は,世界的にみると日本やタイ,イラクなど主に南方の国々に多く,北欧など北にある国では発生率が低い傾向にあります。この原因は不明ですが,特発性という名前のついている頭蓋内出血に至った症例は昭和56年96例,57年117例,58年92例,59年77例,60年30例と日本では発生は減少していますが,世界的には,これまでの報告ではタイの240例をしのいで世界第1位となっています。米国では19例,英国ではわずかに1例しかみつかっていません。
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