特集 主体的な出産
立位分娩の実際—医療者に求められるもの
福島 安義
1
1茅ヶ崎徳洲会病院産婦人科
pp.392-398
発行日 1987年5月25日
Published Date 1987/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207131
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はじめに
産科学や周産期医学の進歩によって,出産に臨む母子の安全度は,著しく高くなった。これには,高度に発達した医療機器と,それを駆使する医療技術とが,大きく関与している。母子ともに安全な出産,それは,まず第一に考えられなければならないものである。しかし,安全のみを追求するあまり,医療機器に囲まれて,機械によって管理されてしまうような,管理分娩に対して,産む側の人々や,出産に関心を寄せる人々から,強い批判の声が上がってきた。欧米を中心として沸き上がったこうした批判から,自然出産が求められ,ラマーズ法をもとにした自然出産が実際に応用されるようになり,また医療者側からも小児科医や精神科医から,母子相互作用に関連しての施設内管理分娩に対する批判がなされ,その見直しがなされるようになってきた。
こうした流れは,しだいに大きくなってきつつある。高度に技術化した社会において,人間性を取り戻そうとするこうした動きは,日本においても例外ではない。産む側の人々,たとえば吉村典子氏の『お産に出会う』の中で語られている施設内管理分娩批判や,自然産を願う人々の叫びを,私たち出産の現場に働く者は,深く耳を傾けて聞く必要があるであろう。
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