特集 いま分娩を考える
立ち産へのトライアル
助産婦の立場から
立位産を見学して
中村 恵子
1
1虎の門病院分娩室
pp.270-271
発行日 1983年4月25日
Published Date 1983/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206212
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本来,お産とは
お産とは元来,生物のごく自然な現象として太古から営まれてきたにもかかわらず,現在ではもし何か異常があったら,という何パーセントかの危険性のために,病院など施設内分娩がほとんどを占めている。しかもそれがあたりまえのこととして受け取られているのが現状である。妊娠したら病院で予約,分娩台に足を縛りつけられて苦しい思いをして産む。そういう施設内で"産ませてもらうお産"があたりまえだと信じて疑わない。計画分娩で,人工的に陣痛をつけ,分娩監視装置でモニターしながらの分娩で,問答無用の会陰切開が行なわれ,陰圧吸引分娩が日常茶飯事の施設もあるようだ。産婦側も,赤ちゃんさえ元気ならたとえ私が苦しくとも,と自分の選んだ施設の方針に口をはさむような,おそれ多いことははなからあきらめてしまう。しかし分娩は本来,自然な生理現象なのであるから,異常がない限り自然の成り行きにまかせ異常にならないよう見守り,異常になりそうなとき初めて手をくわえられるべきものであると思う。
私が見た3例の立ち産の産婦も,分娩台に縛りつけられてお産するのをあたりまえのこととして受容していたが,医師や助産婦の立ち産の説明を聞くと,いやだという者はおらず,突然のことなのでとまどいながらも,きわめて協力的であったように思う。
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