連載 新生児理解のための基礎講座・23
奇形発生を理解するための発生学
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学母子総合医療センター新生児部門
pp.164-173
発行日 1987年2月25日
Published Date 1987/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207078
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きわめて小さな1個の受精卵が,短時間のうちに次々と細胞分裂をくり返しながら,胎芽さらに胎児と発育していく様は,コアセルベートと呼ぼれる原始細胞から,生命が40億年余の間に複雑な人間に発達していく過程を再現するものである。すなわち,個体発生(1個の卵から生命体が発育してゆく過程)は,系統発生(生命体の進化の過程)をくり返すものと言われている。それゆえ,人間という地上で最も進化した(?)生命体が発生する過程では,かつてわれわれの祖先が魚として海で生活していた名残りであるエラ(鰓弓)が生じ,動物であった名残りの尻尾や多毛の時期を経ているのである。このきわめて複雑かつ神秘的な発生の過程においては,わずかな手順の違いが種々の奇形の原因となりうる。
本項では,新生児期にみられる代表的な奇形について,発生学的な観点から解説し,あわせて発生学の基礎的な内容についても触れる。
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