私と読書
「ファーザーブック』を読んで
斉藤 博人
pp.1004-1005
発行日 1986年11月25日
Published Date 1986/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207004
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男性が出産にかかわるための適切なガイドブック
昨年(1985年)9月25日,私たら夫婦に初めての子供が生まれ,幸運にも,私はその出産過程のすべてに立ち会うことができた。出産に立ち会うことにしたのは,妻からの要請もあったが,私自身に次のような感情が湧いていたからである。すなわち,赤の他人との結び付きである夫婦関係に加えて,そのいずれからも自然的血族関係に立つ共通の「子」が生まれ,これが従来の夫婦関係の上に重畳的にかぶさって来て新たな家族関係が築かれるのであるが,これが何とも不思議な気持ちを私に起こさせるのである。生まれてくる新しい家族の一員を,可能な限り最初の時点で,両親で迎えてあげようという気持ちになったのである。子供も,長い人生のパートナーの一人として育って欲しいと思えば尚更である。また,妻の体が日日変化していくこと,更に,子供が生まれるという信じ難い(本当にそういう感じであった)事態が,現実に,確実に進行していることが,私の出産への関心を呼び起こし,ますます出産への立ち会いの決意を強固にし,ついには,出産に立ち会うことは当然で疑問の余地などない,という気持ちになっていった。
私は出産に立ち会うことに決めた。出産方法は,ラマーズ法によることを,妻自身が決意していた。このように決定すると,ほぼ必然的に出産する医療施設が限られてくる。
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