連載 助産婦のための臨床薬理・8
時刻分娩学[1]
柳沼 忞
1
1東京大学医学部付属病院分院産婦人科学
pp.960-966
発行日 1984年11月25日
Published Date 1984/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206550
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生体には,ほぼ1日を周期とする活動のリズムがある.睡眠がそのよい例である.助産婦の方々は,夜勤があるので,実際によく感じることであろうと思われる.このようなほぼ24時間の睡眠りズムは,幼児のころから続いてきたものであり,このリズムをただちに変えることはむずかしい.今年のロサンゼルスオリンピックの最終日のマラソン競技の3日前に,瀬古選手が東京を出発したことは,新聞やテレビなどで報道されたとおりである.これを瀬古の監督である中村氏は,宮本武蔵と佐々木小次郎の厳流島の決闘にたとえている.しかし,両者において大きく異なる点は,宮本武蔵が目と鼻の距離の海を渡ったのに対して,瀬古は10時間余もかかる太平洋を越えたことである.瀬古自身は,時差の問題について,仲間の女子マラソンランナーの佐々木の例をとり,あるいは自らの経験もあったのかもしれないが,3日間で十分調整できると言っていた.しかし,原因はほかにあるかもしれないが.マラソンの結果は17位とふるわなかった.瀬古と同程度の旅行をすると,一般には時差ぼけが1週間近く続くのが普通である.
疲れた時に,自然のリズムに従って.夜ぐっすり眠ることが,疲労の回復に最も効果的であり,逆に自然のリズムに抗して夜更しをしたり徹夜をすることは疲労の大きな原因になる.以前に,著者がストレス性無月経の原因の調査をした時にも,徹夜の仕事が原因というのが比較的多かったのである.
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