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はじめに
双胎間輸血症候群(twin─to─twin transfusion syndrome : TTTS)は一絨毛膜二羊膜(monochorionic diamniotic : MD)双胎の10~20%に引き起こされる特徴的な疾患であり,早期発症型の予後はきわめて不良である1~4).MD双胎の共通胎盤による吻合血管を通じて引き起こされる両児間のアンバランスな血流移動が原因と考えられており,供血児(donor)では,慢性的な血液の供給により循環不全を引き起こし,貧血,低血圧,尿量減少(乏尿),羊水過少,胎児発育不全,腎不全を主症状とする.一方,受血児(recipient)では,反対に慢性的な容量負荷により,多血,高血圧,尿量増加(多尿),羊水過多,胎児体重増加,心不全,胎児水腫を主症状とする.いずれの児も最終像は胎児死亡であり,生存児の神経学的後遺症の頻度も高い.従来から行われている羊水除去による治療ではTTTSの原因を取り除くことができず,羊水過多による早産・破水を防ぎ妊娠週数を延長することが目的となり,その成績も生存率37~78%,神経学的後遺症10~25%と不十分であった1~4).
胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(fetoscopic laser photocoagulation for TTTS : FLP)はTTTSの原因である胎盤での吻合血管を胎内で除去するという本質に迫る治療であり,1990年にDe Lia5)により最初に報告されてから欧米を中心にさまざまな報告6~8)があり,現在は生存率・神経学的後遺症ともに羊水除去に比較して優れた治療であると考えられている9, 10).本邦では1992年に名取ら11)により第1目例が報告され,2002年から村越ら12~14)により本格的に開始された.現在は当センターを含め4施設(聖隷浜松病院総合周産期母子医療センター13),国立成育医療センター15),山口大学病院,新潟大学病院)において同一プロトコールで治療を実施している.本稿では,TTTSの診断およびFLPの適応・要約,治療の実際と成績について解説する.
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