Medical Scope
外回転術をめぐる話題
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.343
発行日 1983年4月25日
Published Date 1983/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206229
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外回転術external versionという名前は教科書で一度は助産婦諸君もみたことがあるでしょう。骨盤位の胎児を母体の腹壁上から頭位にする胎児の胎位矯正術のことです。若い助産婦諸君のなかには,教科書では名前をきいたことがあるけれども,臨床の実際ではその手技を全く見たこともないという方がきっと多ぜいいることと思います。ずっと昔,もう25年以上も前のことですが,日本の産科学がまだドイツ流の医学の流れを示している頃には,この外回転術は臨床の場でさかんに行なわれていたのです。そして,その技術は,ひとつの産科医の腕のみせどころとして高く評価されていたのです。ところが,だんだんとアメリカ流の医学が入ってくるようになって,一例でも障害が発生するような診療行為は止めるべきだというような考えから,この外回転術はほとんど行なわれなくなってしまったのです。というのは,経験された方もあることでしょうが,外回転術をあまり無理に行なうと,何例に1例か,非常に確率は少ないのですが胎児死亡例が出てしまうのです。胎盤をひっぱられたための物理的な原因でおこる胎盤の部分早期剥離によることもあるでしょうし,剥離までおこさなくても子宮をあまり緊張させたために胎児循環が止まってしまったための胎児死亡もあるでしょう。そんなことで,少しではありますが危険をはらんでいる胎位矯正術である外回転術は,だんだんと行なわれなくなってしまいました。
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