調査研究実践講座・13
時間の特性
林 謙治
1
1国立公衆衛生院母性小児衛生学部
pp.313-319
発行日 1983年4月25日
Published Date 1983/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206223
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「因果関係とは何か」(本講座第8回)の章で述べたように,因果関係は時間の問題を無視して語ることはできない。原因は必ず結果の前に作用するということは自明の理であるが,"前"とはどの位前かが因果関係を明らかにする上で重要である。秒,分,時間,日,年,数十年と時間の長さにはいろいろあるが,調査研究で扱うのは短くても時間単位であり,長ければ数十年単位というところであろうが,世紀単位つまり百年を観察単位とする論文も時に見かける。原因が作用して結果がでるまでの間が短ければ観察は比較的容易であるが(たとえば薬物ショックのように),数十年単位におよぶと情報が集めにくいこともあって,直接の原因をつかむことは容易ではない。しかしこれは一般論であって,長い期間経過しないと明らかとならない場合もあり,逆に短時間内にある事柄が発生したとしても詳しい様子がベールをかぶったままの場合も少なくない。
調査研究のなかでは時間の問題は3つのカテゴリーに分けて議論される。第一はSecular trendすなわち長期変動ないし趨勢変動とよばれる類いである。第二は短期変動とよばれるが疫学では疾病の時点流行として登場する。第三に周期変動とよばれる変動形式であり,1年以内のものであれば季節変動,1日を単位として観察するなら日内変動である。
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