私と読書
「生まれる—胎児成長の記録」レナート・ニルソン写真 松山栄吉 訳
山岸 洋子
1
1三楽病院付属助産婦学院
pp.169-170
発行日 1982年2月25日
Published Date 1982/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205981
- 有料閲覧
- 文献概要
生の尊さと"愛"
今の社会において"生"について人々は,真剣に考えているのだろうか。現在,日本で行なわれている人工妊娠中絶の数は,年間60万にものぼる。しかも,無届で闇から闇に葬り去られている数も加えるとその数は100万を下らないだろうといわれている。そして,人工妊娠中絶の経験者は既婚女性では3人に1人(36.1%)というデータもある。その数すべてが生まれてくると仮定すると,日本の人口動態は現在とは違ったものになっていただろう。人工妊娠中絶が日本の人口政策に大きな貢献をしてきた,という皮肉な見方もできるわけである。しかし,そんな簡単に人の命を捨ててしまってよいのだろうか?
この本を読んで,私は,生命の尊さについて知ることができた。そして,人工妊娠中絶という半ば合法的な手段によって,芽生えたばかりのかけがえのない命を奪っている現在の状況に対して怒りを覚えた。
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.