サルとヒトの比較産科学・19
サルの妊娠(Ⅵ)
大島 清
1
1京都大学霊長類研究所
pp.693-702
発行日 1981年9月25日
Published Date 1981/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205904
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はじめに
しばらく,30度を越す真夏日が日本列島に続いた。冷夏予報を出した気象官に白い目が向けられたが,夏に暑いのは苦にならない。一番気象庁を恨んだのは西瓜作りの農家だった。梅雨を受けてあとのカンカン照りが西瓜を実らす。長期予報では今年も冷夏,昨年の"泣き"に凝りた農家は西瓜作りをやめた。しかし思惑は外れ,夏は暑かった。地団駄ふんでもあとの祭り。西瓜の好きな私も被害者の1人だ。手頃の大きさのが2千円となると小首をかしげる。
そういった矢先,高山の大沼れい子さんから夏の便りが届いた。昨年は夏を感じさせた日が1日もなかったこと,今年の本格的な夏を喜んでいる様子が文面にあふれている。朝夕の蝉しぐれと野原の"のかんぞう"がいろどりを添えている,とあった。高山ならではの夏の風情が嗅げる,そんな嬉しいお便りだった。"のかんぞう"は野萱草と書く。ユリ科の多年草,高さは70cm内外で,地下に向けて短い根茎がある。葉は細長い。ユリはみんなそうだ。夏に,ユリに似た黄赤色の六弁花がつく。ただし,昼間だけしか花は開いていない。
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