サルとヒトの比較産科学・21
サルの妊娠(Ⅷ)
大島 清
1
1京都大学霊長類研究所
pp.863-874
発行日 1981年11月25日
Published Date 1981/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205930
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まえがき
自然産と母乳発育について話し合いをするために,9月中旬,下呂温泉病院を訪ね,大沼れい子さんたちと歓談する機会を得た。帰路,大沼さんのふるさと,奥飛騨温泉郷を案内していただいた。高山から平湯へ通じる国道138号を途中で左折したところに,山ひだに包まれた福地温泉があった。昨年だったか,名大と筑波大学の大学院生が原生代の化石を発掘して話題を呼んだところである。教えられるままに私設博物館を見学した。
海抜1,000メートル以上のこの地も,原生代は海の底だった。5億年も前の話だ。飛騨大陸からは2〜5億年前の化石が見つかっている(図1)。放散虫,有孔虫,海綿,クラゲ,エビ,藻類など,この頃の生物は,もっぱら海にだけ棲んでいる下等なものである。体の90%以上が体液で占められ,下等なほど成分は海水に酷似している(図2)。
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