助産婦事典
子宮頸成熟度による分娩の予測
荒木 日出之助
1
1昭和大学医学部
pp.262-268
発行日 1980年4月25日
Published Date 1980/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205696
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
自然分娩発来の時期および分娩の予後をあらかじめ正確に知りうるとすれば,それは妊婦自身はもとより,家族にとってもいつ始まるかわからない分娩に対する不安解消にもなるし,医療者側の対策・準備にもなってまことに好都合である。『いつお産になるでしょうか』『予定日までに生まれるでしょうか』『安産でしょうか』などという問は,産科の外来においていつも妊婦から聞かれることであり,特に分娩予定日を過ぎると『まだですか』『大丈夫でしょうか』と診察のたびに聞かれる。それにもかかわらず,これまた『近そうですね』『少しのびそうですよ』さらに『2度目,3度目のお産はいつ始まるかなかなかわかりませんが大丈夫ですよ』『予定日のあと2週間は正常の範囲ですから心配しないでください』などと曖味な返事しかできないのも常である。たしかに内診すると子宮口は開大していて2指を通し,頸管の長さも短縮(展退)して1cm程度以下で,子宮腟部は薄くかつマシュマロ状に軟らかく,児頭も骨盤入口に嵌入していて,しかも卵膜が子宮下部よりすでに自然に剥離しているようなものは,一両日中に自然陣痛が発来するであろうと予想される。しかしこれとてときには予測のはずれることもあるので,うかつな返答はできない。まして1週間以上も前に正確に分娩発来の時期を予測するなどということは,今日の臨床ではきわめて困難と言っても過言でない。
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.