Medical Scope
血小板減少性紫斑病の母体から出生した新生児
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.280
発行日 1980年4月25日
Published Date 1980/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205698
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血小板減少性紫斑病(ITP)という出血傾向を示す疾患は,若い女性に多くみられることから,妊婦の合併症としても大きな地位を占めています。また,分娩には出血がつきものなので,私達には,その管理がとても問題となるのです。この疾患がどうして発症するのか……ということについては,ほとんどが疑問だらけですが,ひとつ分かっていることは,この疾患をもっているヒトは,抗血小板抗体という特異な抗体をもっているということです。この抗体のために,血小板の産生が抑制されたり,できた血小板が破壊されたりして,結局は血小板数が減少し,凝固しない血液の性質を示すことになります。ステロイドホルモン投与による治療法が開発され,非常によくコントロールされて,分娩が可能になる女性もたくさんおりますし,ときには脾臓を摘出することによって,血小板の減少を防ぎ,妊娠して分娩できるようになった症例もあります。
さて,そこで問題となるのが,これらの血小板減少性紫斑病を合併している母体から生まれた新生児です。母体は血小板が少ないので出血傾向がありますが,胎児時代に血小板産生はどうなっているのでしょうか。新生児には出血性疾患が発生しないものでしょうか。こんな疑問が生じるのは当然のことです。
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