特別企画 母乳哺育指導の新たな胎動
当院における母乳哺育指導の実際
完全母乳栄養に向けてのきめこまかな援助—福井赤十字病院産科病棟
坂口 恵美子
1
1福井赤十字病院産科病棟
pp.681-686
発行日 1979年10月25日
Published Date 1979/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205612
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1.はじめに
「人間の子は,人間の乳で育てるべきである」とか,「母乳は赤ちゃんにとって,最高の飲みものである」などといった言葉は,以前,よく耳にしたものである。しかし戦後,特に近年20数年間に粉乳の製法が非常に進み,乳児は粉乳でよく育つようになり,体重,身長にいたっては母乳栄養児を抜くようになった。このように粉乳でも育つ,むしろ粉乳の方がよく育つとさえ思われている現在,母親やそれらを取り巻く人々に,母乳栄養のすばらしさを理解してもらうためには,われわれ母性看護に携わるすべての従事者が,妊娠中から母乳に対する認識を高めさせるべく,保健指導を行うことが必要である。そして,その指導にあたっては産科スタッフ全員が考え方の統一をはかることが重要なことであり,このことによって初めて母乳栄養の確立が遂行されるものと思われる。
当院産科では,昭和50年5月以降母乳栄養確立をめざして,産婦人科医,助産婦,看護婦が意志の統一をはかり,早期母児同室制をはじめとして,種々の計画を実行に移し,全員が懸命の努力を行った。その結果,母乳栄養確立した母親が1か月目で94%と好成績であった。そこでわれわれ助産婦が母乳栄養確立のために,どのように取り組み,実践しているのか,その経過と実際を報告する。
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