私と読書
真に魅力的な翔ばない女たち—「つい昨日の女たち」を読んで
鈴木 明子
1
1稲田登戸病院産婦人科
pp.646-647
発行日 1979年9月25日
Published Date 1979/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205604
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資本主義の発展途上で村から放り出されたルンペン・プロレタリアートの2世が,この本の著者:川田文子さんです。世の中が,高度経済成長とかで浮かれ騒いでいる頃,両親の,そのまた両親の生まれ育った"むら"の状況が気にかかって旅をはじめた。そこで見た村は,かやぶき屋根は消えてしまっていたが,そこのおばあさんたちは,はるかかなたの時代から女たちが耐え持ち続けてきた世界を展開してくれたのであった。
温故知新という言葉がある。古きをたずねて,新しきを知るということ。この本の登場人物は,明治・大正・昭和を生き抜いてきた女性たちである。今,流行の"翔んでいる女"とはまったく違った,もっと大地にしっかりと足をつけて,根強く生きてきた女性たちである。そして,彼女らの生きざまの1つ1つが,"翔んでいる"世代の私に,目新しく,驚異的であるのです。
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