Medical Scope
ガスリー法の確立まで
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.753
発行日 1976年12月25日
Published Date 1976/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205145
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先天性代謝異常疾患についての最近の医学の発展には非常にめざましいものがあります。その第1にあげられるのは,1953年にR.Bickelという学者が,フェニール・ケトン尿症という代表的な先天性代謝異常疾患の治療法を確立したということです。これはフェニール・アラニンを少ししか含まない食事(ミルク)を与える保育,つまり,低フェニール・アラニン食療法ということになります。そして,この食事療法は生後1か月目から開始しなくてはならないことになっています。
さて,生後1か月目から低フェニール・アラニン食療法を開始するには,当然のことながら,それ迄に患者(新生児)が確かにフェニール・ケトン尿症であるという確定診断をつけておかなくてはならないことになります。その頃のフェニール・ケトン尿症の診断法には,尿によるスクリーニング法が行われていました。フェニール・ケトン尿症の症例は,まず,第1にこの尿による検査法でチェックされていたのです。おむつの間に「フェニステックス」という濾紙を入れて,尿がしみた後にその変色をみる検査でした。ところがだんだんと研究がすすんでくると,この検査法には非常な欠陥があることが判明しました。それはfalsenegativeといわれる,本当はフェニール・ケトン尿症なのに,この検査がマイナスに出てしまうケースがあるということでした。大切な先天性代謝異常の疾患を診断するには,こんなことが1例でもあっては困るのです。
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