私と読書
もの言わぬ生命への思いやり—「暴力なき出産」を読んで
杉山 厚子
1
1国立大蔵病院
pp.380-381
発行日 1976年6月25日
Published Date 1976/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205062
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"赤ちゃん"なんとすばらしい響きをもった言葉でしょう。分娩介助をし,いつも聞き慣れてはいるが,何か私に希望を与えてくれる"産ぶ声"。あたりまえのことをしているときは,安心しきった顔でじっとながめ,そのくせいったん泣き出すや,泣くことは赤ちゃんの仕事だ,もっと泣け,と冷たい態度で満足しきっている周囲の人々。私たちはあまりにも赤ちゃんに対して,慣れすぎてはいないだろうか。
私はこの本を読むにつれて,今まで自分が行ってきたことがいかに残酷で,赤ちゃんを赤ちゃんの側からは何1つ理解しようとしてなかったのではないかとショックを受けました。ひとつの新たな生命の誕生の場で,仕事がスムーズに流れることだけに頭がいっぱいで,私たちの仕事が人格をもった人間との対面なんだという気持ちは,みじんもないのではないか,否,忘れていたのです。
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