特集 合併症をもつ妊産婦と援助
合併症妊産婦のスクリーニングについて
一条 元彦
1
1東北大学医学部産婦人科学教室
pp.148-150
発行日 1976年3月25日
Published Date 1976/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205002
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1.はじめに
妊娠時には種々の理由で母体に負荷がかかる。すなわち,①卵巣・副腎・甲状腺・胎盤などから多量に分泌されるホルモンの負荷,②物質需要増・排泄処理増による代謝負荷,③子宮循環血量増加にともなう循環負荷,④子宮の増大によって惹起される下腹部膨大,横隔膜挙上,脊椎制約などの物理的負荷などがこれである。したがって妊婦はさまざまな愁訴を訴えるが,たとえば熱感,冷え性,心悸亢進,頭痛,めまい,知覚過敏,腰痛,筋肉痛,発汗,口内乾燥感,頻尿,悪心,嘔吐,食欲不振,便秘,易疲労感などはその代表的愁訴である。妊婦の愁訴は自律神経不安定性にもとづく"いわゆる不定愁訴"であることも多く,性格的にヒポコンドリアであれば愁訴が多彩,執拗となる。
重要なことは妊婦の多彩な愁訴をあまり神経質に取扱えば,実に多数の母体合併症が疑診されること,また逆に妊婦は元来愁訴が多いものとして安易に扱うと,実に多くの母体合併症を見落すことになるということである。この弊害をさけるためには,妊婦に一定項目の臨床検査を行ない,これをもって母体合併症のスクリーニングとすべきであり,そのような意味で現今話題の妊婦ドック方式は誠に有用である。
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