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1.はじめに
このたび弘前大学には医療技術短期大学部が設置されたが,看護科の発足と同時に,幸いなことに,助産学特別専攻科も誕生した。そして私たちは,その教育(の一部)を担当することになったが,"さて助産学とは何か"ということがいまあらためて話題にのぼっている。学生を教育するにしても,ここのところがあまりぐらついては困るからである。「なんだ,さんざん設置かたについて運動していながら,そんなことが今頃になってもまだわかっていなかったのか」などと,あちこちからお叱りを受けそうであるが,事実そうなのである。舞台裏を明かすのもお恥ずかしいことではあるが,私たちは"助産婦養成のための特別専攻科"ないしは"助産婦特別専攻科"という名称はしばしば用いてきたが,"助産学特別専攻科"という言葉は,設置運動の段階では一度も用いたことがない。しかし実際に設置を許可されたものは"助産学特別専攻科"であった。したがって名付け親は文部省ということにもなろう。すなわち助産学特別専攻科という名前のついた子どもを,私たちはこの5月からお預かりして,育ててゆくことになったわけである。
ところでこの名前,当初はなんとなくなかなかなじみにくかったが,使ってみるとなかなか結構な名前である。少なくとも,私たちが設置申請の段階で用いていた上述の名称よりはよろしいように思える。"養成のための……"ではだいいち長ったらしいし,それに何となくギスギスした感じを与える。また"助産婦特別専攻科"では,少し気どったいい方をすれば,従来の助産婦学校と似たような印象を与えて,大学らしくもない。これに対して"助産学"とくると何となく重味もあるし,それに何よりも私たちの気にいったことには,"いよいよ助産学を確立すべき時が到来した"という励みや夢を私たちに与えてもくれる。
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