連載 私と読書
豊富なデータにみる家族相—「図説・家族問題」を読んで
寺田 真広
1
1東京大学医学部付属看護学校
pp.62-63
発行日 1973年7月1日
Published Date 1973/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204557
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人間社会における最も基本的な集団のひとつとして家族はある。人は誰でも,好むと好まざるとにかかわらず,この集団に属するわけである。たとえ構成する者が全て場を同じくしないとしても。これが生まれた時点にすでに存在する生物的社会的要求によるひとつの規範であるからかもしれない。しかしながら,1人1人をみると家族への関わりあいは決して同一ではなく,さらに家族の1個1個にあっては,発生と発展における存在の形態はまさに千差万別と言わねばなるまい。
その相違点をさまざまな側面からより客観的にさぐろうというのである。「家族」とはわれわれ1人1人にとっては極めて身近なものであるだけに「こう在るべきだ」「これが当然なのだ」などと,いわば家族そのものを一定の枠内にはめてしまうことが多い。社会的な時代の流れに押される結果の場合もある。そのような観念論とも思われるなかで,家族の問題を語ろうとしても,かえって問題を歪めてゆくだけで正しい認識にせまることは不可能であろうという。そこで,それら既存の観念を捨て,あくまでも冷静に,調査による統計資料を駆使して,信頼できるデータにより,家族をめぐる問題を実証しようとの試みがなされるのである。
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