連載 私たちの法律・11
相続 その2
遠藤 順子
pp.53-56
発行日 1972年2月1日
Published Date 1972/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204314
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遺言,指定相続分,遺贈
〈設例23〉
A子さんの夫のB氏は生前小さいながらも会社を経営したりしていたので死亡時には1億円近い不動産と3千万円分の株式,それに1千万円相当の書画,こっとうを持っていた。初七日の時B氏の遺品を調べたところ,中から遺言書がでてきて,その遺言書には,不動産のうち2千万円相当の土地建物をお妾さんのC子さんに与え,さらに長男のD氏には全財産の3分の1相当のものを譲りたいと書かれてあった。A子さんや次男のE氏,長女のF子さんらはこの遺言書に従わなければならないか。
人は生きている限り,自分の所有物をいつでも自由に使用し,処分することができます。かりに,100億の資産を持っていた人が生きているうちに全部使い果たしてしまったとしても,他の者はそれに対して何も口をはさむことはできません。これを所有権絶対の原則といいます。そしてこの考え方を死後にもできるだけ生かそうとしたのが指定相続分や遺贈の制度であって,これらはともに「遺言」という形をとっておこなわれます。そこで,ここでは指定相続分や遺贈の説明に入る前に遺言についてしばらくお話しいたしましょう。
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