特集 地域母子保健指導実習報告
八丈島での実習レポート
大人の性体験からあみだされた性教育の論理
川上 重治
pp.32-34
発行日 1971年10月1日
Published Date 1971/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204228
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僕の思春期は,戦時中であった。村では女子青年団のことを処女会といっていたが,その理由はわからない。あとで気がついてみると,なぜ男子青年団を童貞会とよばなかったかぐらいの疑問があるだけである。男子は,僕も同じだが,多くは戦場へとかけつけなければならなかった。戦争がたけなわになる頃には処女会には遊女も合同したらしい。
また地方には夜這いの風習もあったらしいが,戦時で若者がいなくなったせいか,うわさにきいた程度であった。夜這いというのは,女性と昼間しめし合わせて夜陰にしのび込むというものらしいが,強引に家屋に侵入するといった変型を僕はきかされた。だから夜這いで侵入すると,泥棒と間違えられ,さわがれて便所に逃げ込んだところを,泥棒は,もういないことを確かめたその家の主人が,眠けまなこで便所にやってきて,便所の隅にかくれている夜這いに,小便のそそぎ口を間違えて放尿したため,夜這いはおやじの小便を頭からあびせられたという話をよくきかされた。むろん僕は夜這いの経験はない。
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