医療講座・2
医療の論理
岡田 靖雄
1
1東大病院精神神経科
pp.37-43
発行日 1970年6月25日
Published Date 1970/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906344
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1.医療問題の基礎にあるもの
考えてみると,わたしたちはたいへんな時代に生きている。いままでも医療の本質についての議論はいろいろあり,医学の階級性といったことも論じられてきました。だが,医療とはなにか,という問いかけがいまのように全面的になされている時代はありませんでした。
わたしがいる東大の精神神経科というところは,東大の中では組織として斗争をつづけている残り少ないところの1つですが,全共斗に加わっているということではなく,その周辺にいたわけです。全共斗運動のなかで出された格言的な,ある意味ではスローガン化しちゃった自己否定という言葉があります。自己否定といっても,内容がいろいろで,自己否定というならば自殺すべきじゃないかと茶化す人もいるわけです。ともかく医者であるわたしの立場にたって考えると,医療とは何かとか,“医療”という名で何をしてきたのか,あるいは今のままの医者であっていいのかというような問いかけに真剣に対応し,自分たちがもっていた特権的なものを否定していくことが,自己否定の内容であろうと考えています。
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