特集 血液型不適合妊娠
ABO式血液型不適合妊娠による新生児溶血性黄疸
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.22-25
発行日 1971年6月1日
Published Date 1971/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204147
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Ⅰ.ABO式血液型不適合妊娠ということばについて
ABO式血液型不適合妊娠というのは,母体と胎児(新生児)の血液型がABO式で不適合であるという意味の語句であり,けっして,夫と妻の血液型が不適合という意味ではない。ABO式に血液型が不適合であるというのは,母体がO型で胎児がA,B,AB型"A型で"B,AB型"B型で"A,AB型の時にいえるが,新生児の溶血性黄疸をひきおこすのは,ほとんどが母体がO型の場合である。
妻がO型,夫がA型の夫婦がいたとする。この夫妻からは,OあるいはA型の子供が生まれる可能性があるが,A型の胎児をこの妻が妊娠した時にのみ「ABO式血液型不適合妊娠」であるといえる。しかし,それだからといって,ABO式血液型不適合妊娠のすべてが,新生児に溶血性黄疸をひき起こすのではない。その中で何例かが「母児免疫」という状態で抗原抗体反応が起った時にのみ生じるいわば突発的事件なのである。したがって,ABO式血液型不適合妊娠という事実は,私達の身のまわりにいくらでもころがっているが,それが原因となって発生する母児免疫のための新生児溶血性黄疸はきわめてまれなものである。つまり,ABO式血液不適合妊娠という言葉と,それによる母児免疫のための新生児溶血性黄疸という言葉とは,区別して用いなくてはならないことがわかるだろう。
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