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ABO式血液型不適合妊娠という言葉が最近多く用いられるようになりました.例えば母親がO型,児がA,B,AB型のような場合にいえるのです.これは血液型不適合による新生児溶血性疾患(M.H.N.)を考えての用語ですが,一般にはずい分と誤解されているようです.たとえ母と子の血液型が異なっていても,その全例に溶血性黄疸が起こるのではありません.すなわち,血液型不適合妊娠がすべて新生児溶血性疾患とはならないのです.しかし,そのうちの数パーセントの新生児,ことに母体が0型の例に多いのですが,血液型の不適合による抗原抗体反応で,新生児は溶血性黄疸となります.生後1〜2日で黄疸が異常に強くなり,交換輸血などの適切な処置をしないと,死亡したり,脳性麻痺を残したりします.この原理は以前にRH式血液型不適合妊娠の話しの時にのべたので省略しますが,今日はその診断について少し考えてみましょう.
RH式血液型不適合による溶血性黄疸よりABO式血液型不適合による新生児溶血性黄疸は程度も軽く,スピードも弱いといいますが,実際にはなかなか大変なスピードを持った疾患です.溶血性というからには末梢血像に溶血による貧血がなくてはいけません,多くは赤血球数500×104以下,ヘモグロビン159/dl以下,Ht,45%以下,網状赤血球20‰以上,というのが私達の経験から割り出した基準です.さらに溶血性黄疸ですから生後すぐに黄疸が出現しなくてはなりません.私達は生後少なくとも72時間以内に交換輸血が必要なほど,血中ビリルビン値が上昇すると考えています.もう1つ,母体血中に児血球に対する抗体価が上昇していなくてはなりません.この抗体の検査は最近では一般の抗体検査は単に結果を示すのみであるから意味がない,というように考えられてきているようですが,メルカプト耐性抗体を測定するとやはり意義があるということもごく最近わかってきました.すなわち,母体血中には胎盤を通過する抗体と通過しない抗体がありますが,2-メルカプトエタノールで血清を処理すると胎盤を通過する抗体のみが残るので,その力価を知ることができるのです.
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