書評
愛する力もて—スモンと斗う日々—著者 中島さと子
木下 安子
1
1東大保健学科
pp.69
発行日 1971年5月1日
Published Date 1971/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204140
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5月の末,新聞の第1面にこんな記事があったのに気がついておられるだろうか。「スモン患者が訴訟国・製薬会社・医師・病院 重大な過失責任—主因はキノホルム」というのである。
スモン(SMON)病というのは下痢や腹痛のあと,シビレが始まる。足の裏からだんだん上行し,臍部にまで達する。このため運動障害がおき歩行困難や歩行不能におちいる。さらにおそろしいことは視力障害がおこり,ひどいと失明状態になる。それに輪をかけて原因究明の段階で様々な説(ウイルス・細菌説,栄養障害説,アレルギー説,農薬説)があり,なかでも感染説が強く,患者が社会から疎外され,自殺に追いこまれた人々も少なくなかった。ところがこの奇病の主因がなんと整腸剤として患者に投与されていたキノホルムであることがほぼ確定したのである。そこで患者は"医療災害"だと訴えをおこしたというわけである。
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