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子宮外妊娠,といっても主として卵管妊娠であるが,産婦人科では緊急開腹手術を要する大切な疾患であることは,すでに助産婦諸君は十分ご存知のことであろう。ところが,この卵管妊娠の手術というと,現在まではほとんどの場合が,卵管が妊娠部位で破裂している場合はもちろん,卵管流産という形で受精卵が卵管膨大部から逆に腹腔内に排出された場合でも,卵管や卵巣までも切除してしまう卵管剔除術,あるいは附属器切除術を行なうことが多かった。そうすると,この患者は一側の卵管や卵巣がなくなることになるので,もうたくさん子供がいて妊娠を希望しない場合はともかく,これからも子供がほしい夫婦には大きな打撃を受けることになる。しかし,もう一方が残っているのだから妊娠の可能性は残されているが,この手術のために附属器質や卵管の癒着などを起こして,それが原因で不妊症に泣く症例は私達が日常よく出会うものである。諸君達も,外妊してから妊娠しないというような訴えを時々きくことと思う。
そこで,外妊患者を調べてみると,外妊患者の1/3は子供がいない未産婦であるという事実がある。ということは,外妊患者の多くは将来に子供を作ることを願っていると思わなくてはならない。そのために,私達は外妊の手術を行なう時には,この患者が将来子供に恵まれるように対策を考えながら手術を行なわなくてはならない。実際にその目的を達するには卵管妊娠の場合など,妊娠している卵管や卵巣などを切除しないで,できるだけ残すことが必要になってくる。つまり,卵管の妊娠しているふくれた部分を切開して,受精卵や繊毛組織をとり出し,切開した卵管をまた縫合して,卵管をそのままに残す手術をすべきであるということになる。これが,卵管妊娠の際の「保存手術」conservative operation,または「卵管形成術」salpingoplastyと呼ばれている手術の方法で,切って取り除くという荒っぽい手術からすると,ていねいな細かい手術となる。私達産婦人科の医師の間には,どちらかというと「切って取る」という荒っぽい仕事の方が行なおれやすい傾向があるのですが,これからは,この保存手術のようなせん細な手術の方法が必要にせまられてくるであろう。
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