特集 環境汚染による健康被害者の救済
公害事例別にみた補償・救済の現状と問題点
スモン
手島 陸久
1
,
片平 洌彦
2
1東京大学大学院・保健社会学
2東京医科歯科大学(難治疾患研究所)臨床薬理学
pp.411-414
発行日 1979年6月15日
Published Date 1979/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205859
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■はじめに
スモン=キノホルム薬害被害者は1971年5月以降,製薬企業と国などを被告として全国23地裁で民事訴訟を提起し,被害に対する完全な賠償・救済を求めてきた.昨78年3月から今年の2月にかけて,ようやく4つの地裁でいずれも原告勝訴の判決が出されたが,被告側はあくまで法的責任を否認して控訴を繰り返している.判決を機に一層の進展をみせている被害者運動と国民世論の中で,国はようやく一定の対策をとり始める一方,今年の夏をめどに和解により全面的解決を図りたいとの態度を示している.また,国は現国会に医薬品副作用被害救済基金法案を提出し,その成立を図っている.このように,現在キノホルム薬害および他の薬害の被害者の救済をめぐる問題は,まさに重要な局面にさしかかっているといえる.
ここでは,スモン=キノホルム薬害被害の実態と,これまでの和解・判決の動向を紹介し,キノホルム薬害被害者に対する賠償と恒久対策のあり方について検討したい.また,医薬品副作用被害救済基金法案についても,われわれの批判を述べることにしたい.
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