特別レポート
新生児における無酸素症の影響
竹内 徹
1
1大阪市小児保健センター小児内科
pp.32-37
発行日 1967年9月1日
Published Date 1967/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203454
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分娩時の急激な無酸素症にさらされると,新生児の体内では,その影響がいろいろの形であらわれてくる.呼吸・循環器系・神経系の変化のみならず,血液自身にも血液化学のうえで急激な変化があらわれる.新生児に対する無酸素症の影響については,古くから生理学的また臨床医学の面からだけでも非常に多数の研究がなされてきた.われわれは今回,とくに「無酸素症による組織の傷害」という点に注目して,このことを新生動物を用いて動物実験で観察するとともに,一方では,臨床例についても,同じ立場から観察してみた.
ある組織がなんらかの形で傷害をうけると,組織の細胞内に含まれている酵素が,血清中に流出してくる.したがって,血清中に増加する酵素を測定することによって,ある組織の傷害の程度を知ることができる.このことは臨床的にしばしば遭遇することであって,たとえば肝臓疾患,心臓疾患あるいは筋肉組織や神経組織の進行性に変性してくるような疾患の場合,その疾患の種類と程度を知るために,血液中(血清中)の酵素活性を測定している事実を考えていただければよい.しかしながら,われわれが日常測定している酵素は,ほとんどが,どの組織にも存在している酵素であるため,ある酵素が特に上昇しているからといって,それだけですぐ傷害を受けた組織を推定することはできない場合がある.
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