母もわたしも助産婦さん
家庭の奥様を夢みていたが
三好 玲子
pp.30-31
発行日 1966年10月1日
Published Date 1966/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203273
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昨年の6月還歴を迎えた母は,やっと自分の人生を多くの趣味の中に味わえる落ちついた生活にもどった現在,あのいまわしい戦時中,空襲のサイレンにおびえ,患者さんとともに逃げまわったり,敵機の頭上にある時でも電話がかかれば,防空ズキンに身をかため,自転車でかけつけた当時の恐ろしさを今は,なつかしく私にきかせてくれる母でございます.
当時幼なかった私たち姉妹は東北の田舎へ疎開させられ.随分淋しい思いをいたしておりました.普段から母のいない,なんとなく物足りない生活には馴れていたものの,何カ月も離れ離れになることは大きな悲しみでした.でも,そのうち戦争も激しさを加え,父も弟も疎開してまいりました.でも母だけは患者さんたちをおいてゆくわけにはゆかぬと,毎日のように鳴り渡る警報下であらゆるものにおびやかされながら,真正面から仕事に立ち向っていました.
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