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農山村における母子保健指導の問題点
伊藤 昭夫
1
1群馬大学産婦人科学教室
pp.23-27
発行日 1965年6月1日
Published Date 1965/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202983
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昭和22年に児童福祉法が施行されて以来,わが国の母子衛生活動は順調に発展し,昭和33年度以降の未熟児対策,昭和36年度からの新生児訪問指導,3歳児健診,昭和37年度からの妊娠中毒症対策(家庭訪問指導)が行なわれ,昭和38年度には3歳児健診の強化,中毒症患者に対する経済的な援助等着々とその対策が進められて,戦前とは比較にならない程の進歩と改善がみとめられ将来に対する明るいみとおしができつつある.しかし乳児死亡率,新生児死亡率等の乳幼児の衛生の改善に比較して妊産婦死亡率の改善は著明でない.妊産婦の健康状態を示す指標としては,妊産婦死亡および同産期死亡をあげることができる.わが国の妊産婦死亡は戦前には先進諸国よりむしろ低率であったが,戦中から戦後にかけての改善が各国より著明でなく昭和36年には10.8(出生1万対)で,欧米先進国に比べると2〜3倍の高率になっている.その主な死因は妊娠中毒症,出血,子宮外妊娠等である.乳幼児死亡率は昭和37年26.5(出生1000対)でこれも先進諸国におとっている.妊産婦死亡の原因の中ではことに妊娠中毒症の占める割合が大きいのがわが国の特徴であるが,これが農山村に多発することは多くの報告で明らかである.妊娠中毒症の原因としては,過労,栄養不全等があげられる.
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