綜説
農山村に於ける社会衛生上の問題点
柳澤 利喜雄
1
1千葉大学
pp.70-75
発行日 1964年2月15日
Published Date 1964/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202792
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1.緒言
わが国の社会衛生問題の中,最も遅れており,また顧りみられることの少ない分野は,農山村のそれであろう。農山村は人口稀薄で,その地理的環境からも,文化に遅れ,交通にも,恵まれていない。また資本主義発展にともなって,現在では我が国の工業発展とからみ合って,めまぐるしい変貌を余儀なくされている。しかし,現在なおまだ,山林開放は行なわれていなく,小数の山林地主と多数の山林労働者からなっており,耕地の狭少と相まって,家計は多くは,山林労働に依存している。また,無医地区的性格をもっていて医療,保健サービスの貧困も指摘されている。このような多くの点において,後進性を示している山村の衛生状態を究明し,その問題点を明らかにして,その対策を考えることは我が国の目下の重要課題の一つである。
われわれは,かかる観点から,数年来,長野県下伊那郡,静岡県磐田郡,愛知県北設楽郡を含む中部山岳地帯を対象に,農山村医学の究明につとめてきたが,ここではその中の社会衛生的な問題の二,三を提起してみる。
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