特集 保健所活動30年記念特集
これからの保健所
研究報告2
農山村における保健事業と保健所事業
前田 信雄
1
1東北大学医学部病院管理学教室
pp.593-597
発行日 1967年10月15日
Published Date 1967/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203549
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今日の農山村は,出稼ぎや過疎化という社会的激動にくわえて,保健問題でもいろいろ深刻な問題をもっている。今まで筆者が2,3見聞したり調査した東北地方の農山村を具体的にとりあげてみて,この保健事業と保健所事業の今後の方向を,試論的に論じてみることにしたい。
本論にはいる前に,以下随所でふれるA村とB村との概況について述べておく(第1表)。この二つの村は奥羽山脈をはさんで隣りあっている豪雪地帯の山村である。地理的・産業的にはよく似た村であるが,社会施設や保健事業のうえでは大きなちがいがみられる。A村は完全な無医村であり,B村は40床の村立病院を有する村である。また,ここ数年間の保健衛生費の投入量も異なっている。前者は毎年ほぼ500万円台であるのに対して,後者はときには1,000万円近い財源を投じている。B村では昭和35年以来,60歳以上の老人と乳児の外来に対して国民健康保険の10割医療給付を行なっている点も大きなちがいである。しかし,両村の人口はともに5〜6千人の規模で比較的類似した小さな村である。
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