講座
新生児の鑑別の問題—法医学的立場から
古賀 康八郎
1
1九州大学・産婦人科
pp.32-34
発行日 1965年3月1日
Published Date 1965/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202931
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分娩が無事に終了すると,その新生児は祝福されるのが当然である.しかし,ときにはいろいろの問題が起こって法医学的に鑑別する必要のある場合がある.たとえば,親子の関係,男女の鑑別,死産の場合に子宮内死亡か分娩後死亡かなどがある.このうちでも家庭的に最も紛争の種になる親子の鑑別をいかにするかについて述べてみよう.
通常は父母が子を認知すれば何も問題になるようなことはないが,世間にはいろいろの事情で親子関係が判然としないために問題となることが少なくない.そのうちでもとくに父が判明しないことが最も多い.男性が自分の子供ではないとか,自分の子供であるなどと主張する場合に,母の証言のみではこれを決定することはできない.さらに,捨子があったりすると,父母ともに不明のことがある.また,まれではあるが,多数の新生児を取扱う産院などでは,たとえ児体に母の姓名を記入してあっても,同一姓名があったりして,どちらの母の子供かわかりにくくなるようなことがないでもない.このような場合に単に顔が似ているようだからというような抽象的な判断ですまされる問題ではない.どうしても,法医学的な科学的判定によらなければならない.それには種々の方法があるが,もっとも一般に用いられるのは,血液学的遺伝因子の検査である.すなわち,親の血液型が子に遺伝することは古くから知られていて,これが親子関係の鑑定に用いられている.
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