連載 私は赤ちゃん・4
お食いぞめ
田村 昭子
1
1もと東京警察病院高看学院
pp.47
発行日 1964年8月1日
Published Date 1964/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202812
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今月はボクがこの世に生を受けてから100日目になる.朝早くからママはそわそわと動きまわっている.100日目が無事で迎えられたというので,お祝いをしてくれるそうだ.ボクは,どうでもいいと思っているが,大人たちは嬉しそうに飛びまわっている.「何をごちそうしようかしら」とママが楽しそうに考えている.どうせボクは食べられないのに.「お食いぞめの記念写真をひとつとろうか」とパパ.おや,ボクにミルクのほかに何か食べさせてくれるらしい.「着物は何にする.」とおばあちゃまは着るものまで心配しはじめた.「そうそう,麻の葉の着物を着せたら,ねえママさん,せっかく揃えたのに1回も着せずじまいではね」とボクのタンスを探しはじめる.「パーパー,今日は誰のオタンジョービ」お兄ちゃんもはしゃぎはじめた.みんなのご好意に甘えるとして,ボクは今日はヒーローである.
いつもはボクひとりベッドに残こされるお食事も,今日はママのヒザに抱かれて真中に坐った.麻の葉の着物を着て.アサの葉はどこまでも続いて切れないので,親子の縁がいつまでも切れない,よい縁に結ばれるというので縁起がよいモノだから,揃えるそうである.
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