巻頭随想
助産婦制度問題を憂う
久保 博
1
1国立東京第二病院産婦人科
pp.9
発行日 1964年2月1日
Published Date 1964/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202688
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列車衝突や炭坑爆発事故による犠牲者の惨状については,ジャーナリズムはセンセイショナルな記事をかかげ,社会的批判もてきびしく当局は最大の低姿勢でこれが対策に狂奔しています.当然のこととはいえ,事前に何とか打つ手がなかったものかと考えさせられます.かかることは社会政策上少ないことではなく,私たちと関係の深い母子衛生の面についてみましても,わが国の妊産婦死亡率は世界第2位,周産期死亡率は世界第1位という不名誉な高率であります.しかし,これはわが国の産婦人科の水準が低いためではなく,妊産婦および新生児の保健対策が当を得ておらぬ結果と考えられます.厚生科学研究班による「妊産婦死亡原因の追求に関する研究」によりましても妊産婦対策の強化改善によってその約60%は防ぎ得るとの報告がなされております.真に国家的対策の急務を痛感するのでありますが,それにつきましても妊産婦および新生児保健指導の第一線の重要役割をになっている助産婦の現状はどうでありましょうか.開業助産婦はいちおうまにあっているようでありますが,勤務助産婦の不足は相当なものであります.
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