講座
感染症と先天奇形
中溝 保三
1
1都立荏原病院伝染科
pp.16-18
発行日 1963年3月1日
Published Date 1963/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202500
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
先天奇型は,妊娠中の母体をおびやかす黒い影であると共に,生まれてからの運命も暗いものであって,最近は睡眠薬のサリドマイドの服用による奇形児の出産が,ジャーナリズムに大きくとり上げられ,社会的反響も大きかった.先天奇形の大多数のものは,胎生の初期で,各臓器が非常な速度で発育する妊娠第12週頃までに加わるいろいろの因子によって発生するものであるが,その成因については,多くの説が提出されている.
1)母体の栄養不足,ビタミンとミネラルの欠乏.
2)内分泌系統の機能不全がある時.
3)胎内における胎位の異常,あるいは羊水過少などの機械的原因によるもの.
4)化学的の成因としては,妊娠中毒症,麻薬,劇毒物,それに上述のサリドマイドもこの中に入る.
5)レントゲン線の照射,放射能の影響もあるといわれる.
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.