研究
未熟児,およびその臨床
藤田 長利
,
福田 フミエ
,
梅島 恵子
,
平松 ハツエ
,
渡木 とし子
,
太田 悦子
pp.36-40
発行日 1962年6月1日
Published Date 1962/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202354
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1.まえがき
わが国の母子衛生行政の中でも,未熟児対策は大きな問題であるが,その解決の要は,未熟児出生防止と,不幸にして出生をみた場合,その養護にある.近年,わが国の乳児死亡率は,昔とくらべ著しく改善され,出生1000に対し40といわれているが,乳児死亡率をこれ以上ひきさげるには,未熟児を含む出生間もない頃の乳児死亡,すなわち,新生児死亡を減らさなければ,ほとんど不可能に近い.未熟児を育てることは,物的,人的設備はもちろんのこと,技術的にも非常に難しい場合が多い.未熟児の出生予防が,未熟児対策の根本をなすことはもちろんであるが,また,生まれた未熟児は一個の生命として,あらゆる手段を尽して育てるべきであることも,また,当然であろう.
元来,未熟児というのは成熟児に対する表現であるが,在胎期間をもとにした考え方より,胎児期の発育を基準にした方が,すべての点で好都合である.従来の早産,未熟児の考え方は,在胎週期が38週に満たないもの,また,生下時体重が2500gに達しないものであるが,この定義にはいくつかの不便を伴う.即ち,人種,性,父母,特に母体の栄養体格,気候などにより,それぞれ,出生時体重が異なることであり,2500gの線が持つ意義にも相違がある.従つて,生下時体重2500gのみを以つて限定した場合,必ずしも,その出生児の生活力を意味するものではないのであつて,いわゆる未熟児の認定は非常に困難な場合がある.
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