講座
原爆と奇形
藤田 長利
1
,
茂田 晃代
1
,
山口 楓
1
1長崎原爆病院産婦人科
pp.50-51
発行日 1962年3月1日
Published Date 1962/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202297
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1.まえがき
原子爆弾がわが国に投下されて,すでに17年,当時の悪夢はもはや消え去つたであろうと思われる現在,本院においては,今なお,200人の原爆症患者が入院治療を受けている.原爆後障害に対する研究は,医学会に多大の波紋を与えたのであるが,なかでも,産科領域における"奇形児と原爆""放射能と遺伝"に関しては,単に医学会のみならず,社会に大いなる問題と不安を与えた.この奇形と原爆の問題は,奇形児の出生頻度が,もともと,非常に少ないので,今後なお数年の歳月をかさなければ,解決するものではないと思う.ともあれ,最近,思春期に原爆の惨禍を受け,その後,原爆症は回復し,結婚したが,偶然(あえてこういう)奇形児を得,その責苦から再生した原爆婦人を知つたので,この症例を中心に報告したい.
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