随筆
病床に伏して思う
T. S
pp.54-55
発行日 1961年11月1日
Published Date 1961/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202233
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今まであまりにも健康に恵まれすぎていたため,病気になつたらどうしようなどと,夢にも思つたことのない私には,病気など縁遠いものに思われていた.
この世に生を受け,病床に伏した経験のない私は,人の看護をしていても,ただ理論上に"病人心理"を勉強したにすぎず,身をもつて"病人の心理"をあじわつたこともなく,36年間を過ごして来たのであつた.だから健康の続く限り,ただ体を無理使いしても,自分の思つた通り,計画通りに,何事も今日までやり通して来たのであつた.
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